変わる「産地とデザイン」会議 2016

    

産地とデザイン会議 2016

産地とデザイン会議は、2012年、2013年、2014年の毎年3回、東京・六本木のAXISで開催しました。全国から延べ300人以上の方々にご参加いただき話し合ってきましたが、そこでは次のような問題点が見えてきました。

•昔ながらのやり方では、伝統技術を大切にした産地のものづくりは成り立ちにくい時代になってきている。
•地域の状況、インターネット、流通などの変化をどう捉え、どのように動けばいいのか。
•デザインの必要性は求められているものの、それぞれの産地やそれぞれの企業はどのように取り組んでいけばよいのか。
•産地とものづくりに取り組んでいる行政、デザイナー、プロデューサー、バイヤーなどがどう連携していけばうまくいくのか。

これら以外にもさまざまな立場からさまざまな意見や発言がありました。今後もこうした問題意識や取り組みの方法を共有できるような情報交換や交流を進めることで、産地のものづくりやデザインを支援していきたいと考えています。
そこで、今年から素材をテーマに、産地の活動を聞くことから始める連続会議を行います。木工、陶磁器、繊維、漆、金属、紙、ガラスなどを連続開催する予定です。
 会場は、かつて産地のものづくりに尽力された工業デザイナーの秋岡芳夫さんが主宰した東京・中野の「モノ・モノ」をお借りすることができました。
 会場の関係上、20名だけの小さな会議となりますが、その分、密度の濃い会議を企画しています。申し込み順に受付け、定員になり次第、締め切りますので、申し込み先に必ずご連絡ください。

2016年10月


            産地とデザイン会議実行委員会
            影山和則 中野照子 萩原 修 古庄良匡 吉川友紀子
            www.sanchi-design.jp

※終了しました
産地とデザイン会議2016 開催内容
今年度開催の会議は以下の通りです。講師の方の情報などはサイトで随時更新していきますので、ご確認ください。

木工 Woodworking
11月5日(土)17:00ー19:00 (16:30受付開始、19:30からは懇親会)
北海道・旭川。家具から木工芸品まで幅広い産地の活動を展開している産地の取り組みを近藤俊介さんに。埼玉県・春日部。伝統産業として衰退し国産桐材の供給などに苦慮する桐加工メーカーについて、厚川産業の厚川秀樹さんに聞く。*申し込み締め切りは10月31日(月)

会議参加費/無料 懇親会費用2,000円

場所/モノ・モノ
〒164-0001 東京都中野区中野2-12-5 メゾンリラ104
JR・地下鉄東西線 中野駅南口改札から徒歩3分
アクセス

厚川秀樹 Atsukawa Hideki
厚川産業株式会社 代表取締役
1955年、埼玉県春日部市生まれ。
大学卒業後、明治31年創業の桐箱製造の家業を4代目として承継する。1984~97年に埼玉県産業技術総合センターの支援のもと春日部桐箱工業協同組合による「ウッドパッケージ展」「桐・きり・KIRI展」をアクシスギャラリーで開催。1994年通産省グッドデザイン賞選定。1998年に埼玉県吉川市に現工場を移転し積水化学工業等の住宅産業、建材加工に進出する。2015年に秋田県雄勝の森林組合と連携し「桐のある暮らし展」を開催、桐の建材や新商品開発を積極的に進めている。

近藤俊介 Kondo Shunsuke
家具デザイナー
2003年、京都から北海道に移住。旭川の家具メーカーにて、木製家具の開発、設計を行う。その後、大阪と中国広東省のデザイン事務所にて、国内外のメーカーとのデザインプロジェクトに携わる。現在は独立して、旭川を拠点に、家具のデザイン、企画・設計を中心に、暮らしに関わる製品を生みだす活動を行なっている。旭川木工コミュニティキャンプでは‘14、‘15年と実行委員長を務め、地域や人との繋がりの輪を広げる活動も行なっている。


11月5日 産地とデザイン会議『木工』の概要

●11月5日、産地とデザイン会議「木工」が終了

埼玉県春日部市を産地とする桐加工メーカー厚川産業の厚川さんは、業界全体が衰退し廃業するメーカーも出るなか、住宅産業に進出し、秋田の桐産地と連携しながら、新たな分野に広げていこうという取り組みを紹介しました。
 旭川で活動するデザイナーの近藤さんは、そもそも旭川が産地としてどのような歴史を築いてきたのかを、大きな年表で解説。そのなかで10年前から始めた旭川木工コミュニティキャンプがどのように活動してきたか、を語っていただきました。
 それぞれの話を受けて、日本の「木工」産地でものづくりを続けていく問題点や今後、考えられる変化、林業の衰退と国産材の危機、国が示す各種補助金の良い点や注意しなければいけない点などの話が出ました。
 産地メーカーの厚川さんから「デザイナーに入ってもらう時には、新しい販路の開拓まで期待してしまう」という話もあれば、参加したデザイナーからは「産地と仕事がしたいと思っても、産地の入口はわかりづらいんです。行政指導の場合はなかなかハードルが高いし、どうしても“お見合い”的な雰囲気で断りにくい。旭川のAMCCのように “合コン”的なフリーな出会いのほうが、僕らは入りやすい」という具体的な話も出ました。
 短い時間でしたが、春日部、旭川それぞれの特徴も感じられ、参加者からの活発な意見も出た会議となりました。

※終了しました
陶磁器 Pottery and Porcelain
12月10日(土)17:0019:00 (16:30受付開始、19:30からは懇親会)
佐賀県・有田焼。創業400年の催事を運営する佐賀県窯業技術センターの浜野貴晴さんの取り組み。石川県・九谷焼。窯元に生まれ、現在は東京でプロダクトデザイナーとして活躍する吉田守孝さんが考える伝統産地の課題など。
*申し込み締め切りは12月5日(月)
応募フォームはこちら

会議参加費/無料 懇親会費用2,000円

場所/モノ・モノ
〒164-0001 東京都中野区中野2-12-5 メゾンリラ104
JR・地下鉄東西線 中野駅南口改札から徒歩3分
アクセス

浜野貴晴 Hamano Takaharu
佐賀県窯業技術センター 特別研究員
1971年、埼玉県川越市生まれ。
大学院修了後GK設計に入社し、都市・環境デザインを担当。その後、消費者起点の商品開発WEBサイト「空想生活」を運営するエレファントデザインのDTO(Design To Order)事業兼制作部長として、Switch! the design projectなどを手がける。独立し、合同会社プロモダクション設立。佐賀県・有田焼。県が推進する有田焼創業400年事業を支援する佐賀県窯業技術センターの一環で、2014年6月より2017年3月までの任期にて、佐賀県窯業技術センターの特別研究員に就任。同センターの機能強化、これからの産地でのものづくりのあり方を研究する。



吉田 守孝 Yoshita Moritaka
プロダクトデザイナー
石川県小松市出身。金沢美術工芸大学卒業後(財)柳工業デザイン研究会に入所し柳宗理に師事、デザインと民藝を学ぶ。19882011年まで在籍し、キッチンツールなど多くの製品開発に携わる。201112月に「ヨシタ手工業デザイン室」(Yoshita Handi-Design Studio)を設立。「手で触れ五感に感じることを大切にしたい」、「手を動かし道具や素材との対話から気づき着想したい」、そういう思いから手工業デザイン室と名づけた。
これまでの経験を活かし手仕事から工業製品までデザイン活動を行っている。


12月10日 産地とデザイン会議『陶磁器』の概要

1210日「陶磁器」の会議が終了しました

 佐賀県の有田焼と石川県の九谷焼。もともと古伊万里、古九谷は工人同士の交流などで関係が深いと言われています。今回はこの二つの産地から、佐賀県窯業技術センター特別研究員の浜野さん、九谷焼の窯元に生まれたプロダクトデザイナーの吉田さんを講師としてお迎えしました。

 有田では2013~2016年度の3年強、有田焼創業400年事業として多くの記念事業が行われています。まずは県側の職員としてこの事業を支援してきた浜野さんからの報告でした。佐賀県が多額の予算を投じたこの事業では、国内外のたくさんのクリエーターが現地を訪れ陶工と交わりデザインするプロジェクトなどによって、市場開拓、産業基盤の整備、情報発信の充実を図り、有田焼の新たな可能性が示されました。
 吉田さんは、小ロット生産から陶磁器リサイクルなどいくつかの商品開発を紹介。そして実家である錦山窯では、現代の暮らしや嗜好に合わせた絵付けを模索していて、伝統技術を継承しながら商品としていく新しい取り組みについて語りました。
 これに対して会議に参加した九谷焼の窯元当主からは、有田焼のチャレンジに対して賞賛はするものの、自分たち絵付けの産地では工業化・事業化できないという現状がある。産地によって抱える問題は違うのではないかという指摘もありました。

 伝統技術の継承という点で浜野さんは、技術継承のため若い人たちに教える時にまずはろくろから始めるのが常套になっているが、実際の仕事になると、ろくろの技術を使える仕事がない。教える以前に、まず仕事をつくることから始めなければいけない、と語りました。吉田さんは、産地のなかで一つ一つは小さな工場であっても、連携していけば納得のいくものづくりができるのではないか、と発言。それぞれの産地やメーカーに合ったビジネスモデルが必要だという話になりました。

 また、参加したプロダクトデザイナーは、長く海外で仕事をしてきた経験から、ヨーロッパでは徹底した工業化と手仕事重視の二極化が進み、陶器にフォークやスプーンをつけて商品化するように、異なる素材や生産地が連携することが増えたと報告。これには浜野さんも吉田さんも同意見で、産地や業種を越えたコラボレート、ものづくりの協働化はさらに進むだろうと語りました。
 その時に重要なのは、それら全体を俯瞰し、目指す方向に導きコントロールするプロデュース的な役割。その役割はかつて問屋が担い、少し前にはデザイナーに期待されていましたが、今はブランディングなどを行う専業のプロデューサーやコーディネーターも出てきています。これからは、販路をイメージし、ものづくりの産地や企業を把握して、意欲あるデザイナーと的確につなぐことができる人材が必要になるという話になりました。活発な意見の交換などもあり、今後の問題点もあきらかになった会議でした。

※終了しました
繊維 Textiles
2017年1月14日(土)17:0019:00 (16:30受付開始、19:30からは懇親会)
山梨県・富士吉田。山梨県富士工業技術センターの五十嵐哲也さんと槙田商店の槙田洋一さんに聞く郡内織物産地の取り組み。埼玉県・秩父。太織工房Handweaver Magnetic poleの北村久美子さんに聞く、近年復活しつつある秩父銘仙産地の話。
*申し込み締め切りは1月9日(月)
応募フォームはこちら

会議参加費/無料 懇親会費用2,000円

場所/モノ・モノ
〒164-0001 東京都中野区中野2-12-5 メゾンリラ104
JR・地下鉄東西線 中野駅南口改札から徒歩3分
アクセス

五十嵐哲也 Igarashi Testuya
山梨県富士工業技術センター繊維部 主任研究員
千葉大工学部工業意匠学科を卒業、山梨県にデザイン職として採用される。山梨県デザインセンターを経て、1999年より山梨県富士工業技術センター勤務。縞柄のデザインアプリケーション「乱縞メーカー」の開発、「ジャガード織物の製造方法」で特許を取得など、コンピュータ活用による織物産地のデザイン支援を行い。郡内織物産地のブランド向上に関する情報発信として冊子「LOOM」を刊行するなどの総合的支援を実施している。

槙田洋一 Makita Yoichi
株式会社槙田商店 常務取締役
横浜国立大学経済学部卒後、服飾雑貨メーカーに入社。百貨店担当として企画・提案・営業を行う。その後ブティック系列店の懐石料理屋の店長などでマーケティングを学ぶ。2009年、槙田商店に入社。傘生地の企画・製造OEM営業を行う中、不況により、取引先製造拠点の海外シフトによる受注の減少に危機感を抱き、歴史・産地・技術を中心にした槙田商店オリジナルブランドの商品開発をスタートし、現在も積極的な活動を続けている。

北村久美子 Kitamura Kumiko
秩父太織 Handweaver Magnetic Pole 代表 
埼玉県浦和市(現さいたま市)生まれ。
短大卒業後、染色などの仕事を求めて秩父の捺染工房を訪ねる。銀座で個展を開く手機織りの展示会で秩父太織の師と出会い、以後20年間、秩父に通いながら太織を織り続ける。織物産地の中で織物組合や若手後継者たちと交流しながら活動を継続し2013年に国の伝統工芸士に認定。2014年に独立し、秩父市内に「ハンドウエアーマグネティクポール」の工房を構えスタッフと共に制作を続けている。


1月14日 産地とデザイン会議『繊維』の概要

114日「繊維」の会議が終了しました

 水田や畑作がむずかしい関東の山間部では、山村農業として蚕を飼い機織りを生業としていました。そのため、関東平野の山際には弧を描くように繊維・織物産地が点在しています。今回は山梨県富士吉田周辺と埼玉県秩父の産地から講師をお招きしました。

 山梨県富士工業技術センターの五十嵐哲也さんは、「織物は、素材であり商品でもあるという特徴があります」と言い、富士吉田産地の歴史から語り始めました。
 富士吉田周辺は、明治から昭和初期には「甲斐絹」という名の織物で知られた産地でした。日本全体では繊維は大正から昭和初期に隆盛を極め、繊維産業で近代化を果たしたと言われるほど重要な産業となりました。しかし、戦後の高度経済成長期を境に、繊維産業全体が衰退していきます。富士吉田産地では、戦後の成長期にOEM(他社ブランドの製品の製造)で発展しましたが、それはスタジオ・ジブリの映画『千と千尋の神隠し』のように、仕事が増える反面、それまで広く知られていた産地の名前を取られてしまう(前面に出す機会がない)時代でもありました。バブル崩壊後、仕事そのものが減少するなかで、もう一度、産地の名前を取り戻そうという動きが出てきます。自社ブランドづくり、学生とのコラボなどによる新商品の開発、こまめで多彩な情報発信を8年以上も続けてきたおかげで、今では各方面から注目される産地になっています。
 その具体的な取り組みを、槙田商店の槇田洋一さんが語りました。OEMでおこなってきた傘や洋服地のデザインから発展させ、独自の感性でデザインされた魅力的なオリジナル商品をつくり出しています。

 一方、埼玉県秩父市は、「秩父銘仙」の産地として知られています。最近、国の伝統工芸品として認定され話題になっていますが、現実に銘仙の織元は数社しか残っておらず、後継者問題もあります。
 その中で、銘仙が生まれる以前に養蚕農家で織っていた「秩父太織(ふとり)」の工房を立ち上げたのが、北村久美子さんです。秩父産の繭を使い、本来の「着やすく丈夫」という特徴を持った「秩父太織」をつくろうと、広幅の北欧織りの織機や技術を取り入れて扱いやすくしています。作家的な工房ではなく、事業として成り立つように、工夫しながら技術の開拓に励んでいます。

 会議に参加した若いデザイナーからは、「作家活動ではなく、デザイナーとして働きたかったが、当時は就職がなかった。産学協同のコラボなどもなかった。こういう産地があることをもっと早く知りたかった」「自分が求めていたデザインの仕事と、就職時に出会えるデザインの仕事は少し違っていたことがわかった」という声がありました。
 これに対して、八王子で染工場を営む男性からは「若いデザイナーには、産地の情報を知らなかったという悔いがあるが、産地側は、若い人が産地に就職したいと思っていることがわからなかった、という思いがある。ようやく、産地とデザイナーが出会えるようになったのではないか」という指摘もありました。

 富士吉田も秩父も、産地としての規模は小さく、伝統的な技術に新しい技術を加え設備を使うなどして手間をかけて、現代の生活に合わせたものづくりを目指しています。
 こうした活動も多くの人に知られなければ、売上げには結びつきません。富士吉田では、ホームページや冊子などで活動情報を発信、さらにイベント開催やバスツアーなどで自らのことを知ってもらう努力を長く続けています。両産地はイメージばかりではなく、きちんとした技術を土台にしたものづくりを進めています。こうした地道な活動の中から、大きくはないけれど「ほんものの名前」が浮かび上がり、伝統技術を活かした新しいものづくりが可能になるのではないか、と思わせる会議となりました。

※終了しました。
参加申し込み

参加ご希望の方は、11月、12月、1月の各回ごとに、下記の応募フォーム、もしくは、メール、ファクスにてお申し込みください。申し込まれた方に会場のご案内などをいたします。なお、定員20人に達した場合には締め切らさせていただきます。

※メール、ファクス等でお申し込みの際には、次の項目を明記してください。
•お名前
•連絡先(住所・電話・メールアドレス)
•職業
•年齢(年代でも可)
•この会議で聞きたいこと、ご意見など
•懇親会に参加しますか?  はい  いいえ


会議の申し込み・問い合わせ
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産地とデザイン会議実行委員会事務局(アトリエ苫人・中野)
までお願いします。
電話03-3469-0845
FAX 03-3469-0853
tomato@mercury.plala.or.jp

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