企業がデザイナーにデザインを依頼しても、結果的に続かないことが多い。また、デザイナーやプロデューサーの熱意があっても、売れないために金銭的問題や人間関係がこじれて継続しないこともある。よい関係を維持するために、何をどのようにすればいいのか。これからのものづくりのために、産地やデザイナーはどのように関係を構築すればいいのか。パネラーの話を聞くだけでなく、参加者もそれぞれに話し合いながら、約4時間にわたって討議された。
各産地の状況は複雑で、簡単には結論は出ない。最後に「あなたが、今、行うべきこと」として参加者それぞれの考えを付箋に書き、壁に掲示した。まとまった答えは見出せなかったが、いろいろな言葉が掲示され、今後も話し合いを続けていくことが強く望まれた。
場所/AXIS GALLERY
東京都港区六本木5-17-1 アクシスビル4F
基調講演/影山和則(埼玉県産業技術総合センター)
第1部 「継続すること」
パネラー
小林 知行(諏訪田製作所代表取締役社長)
佐藤 明(東北工業大学新技術創造研究センター)
外山 雅暁(経産省クリエイティブ産業課デザイン政策室)
宮嶋 慎吾(武蔵野美術大学デザイン学科教授)
古庄 良匡(小鳥来 古庄デザイン事務所代表)
第2部 「関係をつくる」
パネラー
磯野 梨影(ペアーデザインスタジオ)
辻 晃一(丸重製紙企業組合専務理事)
日野 明子(スタジオ木瓜)
芳賀 修一(公益財団法人にいがた産業創造機構経営支援グループ)
杉原 広宣(スカイ・モーション代表取締役)
司会・進行/萩原 修(デザインディレクター)
会議参加人数/105名
磯野 梨影 Isono Rie
プロダクトデザイナー ペアーデザインスタジオ
東京もしくは北九州生まれ。武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科卒業後、ソニーのデザインセンター、ロンドンのデザイン事務所を経て、2000年からペアーデザインスタジオとして活動を開始。多摩美術大学非常勤講師。子どもと一緒のくらしを考える「コド・モノ・コト」運営メンバー。プロダクトデザイナーだが、場合により、商品に関わるデザインディレクションも行う。産地との仕事では、富山県高岡市の山口久乗で行った「優凛シリーズ」がある。
小林 知行 Kobayashi Tomoyuki
諏訪田製作所 代表取締役社長
1963年、新潟県生まれ。明治大学卒業後、地元商社を経て、92年に諏訪田製作所入社。97年に3代目の社長に就任。諏訪田製作所は、ステンレス超高圧鍛造、刃合わせの職人技でつくられるニッパー型爪切りメーカーとして世界シェアを持っている。2011年、自社工場をいつでも見学可能なオープンファクトリーにリニューアル。入口には製造工程や会社の歴史を展示したギャラリー、見学通路はガラス張りにした。鍛冶屋にとって必須である漆黒を基調に、機械、フロア、壁まで黒にこだわった空間構成を実現させた。
佐藤 明 Satou Akira
東北工業大学 新技術創造研究センター 事務長・産学連携活動部門長
1949年生まれ。71年に東北工業大学工業意匠学科卒業後、宮城県工業技術センターに。その後、宮城県庁商工労働部地場産業振興班、宮城県産業技術総合センター企画事業推進部長、食品バイオ部長などを経て、所長に就任。2009年に宮城県庁を退職。宮城県工業技術センター(現・産業技術総合センター)では、デザイン分野の研究職員として、工芸品から工業製品までの幅広い分野の商品開発支援を行う。特に地域資源を活用した商品づくりを支援し、地域おこし・産業おこしに貢献。津山町の杉を活用した木工芸品づくり、伝統工芸品の雄勝石(硯石)を活用したクラフト製品など、さまざまな商品づくりから流通までの支援を行った。現在では、産学共同研究の推進、地域や産業との連携を目指した企画や事業を実施している。
杉原 広宣 Sugihara Hironobu
プロデューサー スカイ・モーション代表取締役
1972年、埼玉県生まれ。大学卒業後、ハウスメーカーを経て、リビング・デザインセンターOZONEに勤務。住宅関連やライフスタイル提案型のイベントやセミナーのプランニングの他、日本各地のものづくりやモデル住宅・店舗の建築プロデュースを行う。2011年、日本のものづくりのショールーム「Japan creation space monova」をオープン。地域関連の取り組みには、鳥取県東かがわ市のJAPANブランド事業、有田焼新商品開発、今治タオル商品開発、山中漆器PR支援、徳島家具ブランドプロデュース、四国4県戦略的デザイン調査(経済産業省)など多数。
辻 晃一 Tsuji Kouichi
丸重製紙企業組合 専務理事
1979年生まれ。大学卒業後、フリーターを経て、名古屋のベンチャー企業に勤め企画営業に関わり、東証マザーズ上場と東証一部上場を経験。その後、家業である丸重製紙企業組合に就職。機械漉き美濃和紙の製造・販売・企画の現場で業務改善やコスト削減を図る一方、積極的な情報発信とコミュニケーションで新規製品の開拓も進めている。今では「美濃と美濃和紙を元気にする!」をモットーに、紙づくりだけでなく「まちづくり」も見据えた活動も積極的に行っている。
外山 雅暁 Toyama Masatoki
経済産業省商務情報政策局クリエイティブ産業課デザイン政策室 室長補佐
1973年岐阜県生まれ。1999年Valand School of Fine Arts(Sweden)に交換留学。2000年金沢美術工芸大学美術工芸研究科(大学院)修了。2001年特許庁入庁。意匠審査官、総務部国際課、EJEF(UK)留学等をへて、2012年4月から現職。
芳賀 修一 Haga Shuichi
公益財団法人にいがた産業創造機構 経営支援グループ 市場開拓チーム(販売戦略担当)
1967年生まれ。武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科卒業後、95年に新潟県工業技術総合研究所デザインセンターに入所。新潟県生活文化創造産業振興協会を経て、2003年から現職。新潟県内の企業と恊働で進める国際ブランドプロジェクト「百年物語」の事業企画・運営・商品企画・デザイン開発支援業務を行っている。
日野 明子 Hino Akiko
クラフトバイヤー
共立女子大学在学中に、教授であった秋岡芳夫氏に影響を受ける。松屋商事(株)を経て、1999年独立しスタジオ木瓜を設立。一人で問屋業を始める。百貨店やショップと作家・産地をつなぐ問屋業を中心に素材を限定せず生活用具の展示会や企画アドバイスを行う。
古庄 良匡 Furushou Yoshimasa
小鳥来 古庄デザイン事務所 代表
大分県竹田市生まれ。日本大学法学部、桑沢デザイン研究所プロダクト専攻科卒業後、AURA inc.を経て、2005年に古庄デザイン事務所、2008年に小鳥来、2009年にオーガニックフラワーショップわなびや設立。輪島キリモト東京アドバイザー、アウラ社外取締役、北陸先端科学技術大学院大学「伝統工芸MOTコース」ディレクターなどを歴任。「地場産とのものづくり」に関する仕事、「ECO」に関する仕事をテーマにデザイン活動をしている。
宮嶋 慎吾 Miyajima Shingo
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科 教授
1948年、東京都生まれ。武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業後、GKインダストリアルデザイン研究所入社。82年にスタジオスコープ、86年にケイプロジェクトを設立し、小売業プライベートブランドデザインや地域の商品開発を実施。96年に大学に戻って教鞭をとり、99年に教授に就任。地域の商品デザイン、ブランド開発や商品開発のデザイン実施、地方産地の商品デザインやブランディング、大学での産学連携プロジェクトなどを担当し、全国の産地で幅広く活動している。
Copyright 2017producing district and design. All Rights Reserved.